シャドーイングとは?
シャドーイングとは、聞こえてきた英語に1~2語あるいは0.5秒ほど遅れて、声に出して復唱をするトレーニングです。英文は見ずに、音だけを聞きながら英語を復唱していきます。音声を影のように追いかけていくことからshadow(影)ingと呼ばれています。同時通訳者を目指す場合の基本になるトレーニングでもあります。
シャドーイングの効果
シャドーイングによって得られる効果は、リスニング力とスピーキング力の向上、英語を英語で理解する癖がつくこと、そして発音の矯正です。
シャドーイングの効果①:リスニング力の向上
受験英語を中心とした日本の英語学習では、リーディングとライティングに焦点が当てられます。つまり、「読めるけど聞き取れない」や「書けるけど話せない」という悩みを抱える人が多くいます。
要因の一つとしては、英語をインプットする際に「カタカナ発音」、「日本語なまりの発音」に慣れてしまい、英語ネイティブが話す英語のイントネーションやアクセント、音と音のつながりなどに慣れていないことが挙げられます。
例えば、hum and eggは「ハムアンドエッグ」となりそうですが、andは「ン」と軽く発音され、さらに「エッグ」の「エ」とつながり、「ハムンネッグ」と聞こえます。
つまり、自分が予想している発音と異なる音で発音されるため、「今なんて言った?」となり理解が追い付かなくなるのです。
シャドーイングをすることにより、「カタカナ発音」が矯正されて英語の正しい発音が身に付き、結果として英語が聞き取りやすくなります。
シャドーイングの効果②:英語を英語で理解する癖がつく
英語を理解したり発音したりする際に、日本語で考える癖が抜けないのもリスニングが苦手な原因の1つです。
例えば、「今の英語どういう意味だっけ?」と意識しているうちに音声が先に進んでしまい、ついていけなくなったりします。
これを解決するには、「英語を英語のまま理解する」ことが必要ですが、シャドーイングの際に英語の意味も理解しながら進めていくことで、「英語を英語のまま理解する」ということがどんどんできるようになっていきます。
シャドーイングの効果③:スピーキング力の向上
スピーキングに必要な技術の1つに「言いたいことが瞬時に英語で出てくる」ということが挙げられます。
当たり前ですが、英語を話す際に「主語は〇〇で、動詞は××を使おう」というように、文を組み立てるところから考えるわけではありません。
そもそも、何度も発音練習することで英語のフレーズを覚え込んでおき、その場の状況に応じてふさわしいフレーズを発言する、というのが英語で話すという行為です。
シャドーイングを行っていくと、この「瞬時に言えるフレーズ」が自分の中に貯まっていきます。これが増えるほどに、言いたいことが言いやすくなる、すなわち英語が話せるようになっていきます。
シャドーイングの効果④:発音の矯正
英語と日本語の違いの1つとして、英語には日本語にない発音があったり、単語と単語がくっついて別の音になったりすることが挙げられます。
シャドーイングによって、歌を覚えるような感覚で、この英語独特の発音に慣れていくことができます。
参考)発音
シャドーイングのやり方
シャドーイングは、以下の4つの手順で行っていきます。
①全体の主旨を理解する(問題集の場合は問題を解く)。
②文字を見て、何と言っているか分からない部分をなくす。
③文字を見ながら、音声に合わせて発音する。
④文字を見ずに、音声の1~2語後に続けて発音する。
シャドーイングの手順①:全体の主旨の理解
細かいところが聞き取れなくても構わないので、一度全体を聞き通します。問題集に取り組んでいる方は、問題を解くことになります。
シャドーイングの手順②:文字を見ながら音声を聞く
シャドーイングの下準備として、文字を見ながら音声を聞き、何と言っているかがわからない箇所をなくします。
シャドーイングの手順③:文字を見ながらシャドーイング
文字を見ながらシャドーイングをします。この際に、発音やアクセントと内容を理解することを意識して、何度か声に出して読んでいきます。ある程度慣れている場合は、この手順を飛ばして④に飛んでも構いません。
シャドーイングの手順④:文字を見ずにシャドーイング
音声だけを聞きながらシャドーイングをして仕上げます。1度だけではなく、意味を理解しながらスラスラ言えるようになるまで、数回~数十回繰り返します。1日で終わらせようとするのではなく、何日かに分けて繰り返す方がはるかに定着しやすいです。
シャドーイングでは期待できない効果
シャドーイングでは高い効果が得られない項目として、語彙力、文法知識、発音の知識が挙げられます。英語の生の発音の練習にはなりますが、そもそも日本語にはなくて英語にしかない発音などの知識を体系的に学ぶことはできません。 シャドーイングの学習を中心とする前に、基本的な語彙力と文法力、発音に関するルールをある程度固めておく必要があります。
シャドーイングでは期待できない効果①:語彙力の飛躍的なup
シャドーイングだけでは、新しい語彙の習得においては効率がよくありません。知っている単語が多い教材を使っていくので、単語帳などに比べると、知らない単語を目にするペースは格段に遅くなります。語彙力の強化も必要な場合は、その試験にあった単語帳にも並行して取り組んでください。
シャドーイングでは期待できない効果②:文法力up
さらに、語彙力に加えて、基本的な英語のルールを知らない場合にも、いきなりシャドーイングに取り組んでも効果は薄いです。なぜなら、ある英文がなぜその意味になるのかが理解できないからです。
英文の意味が理解できていない状態で繰り返しても、「英語を英語で理解する」という訓練ができなくなります。シャドーイングの学習を中心とする前に、基本的な語彙力と文法力をある程度固めておく必要があります。
シャドーイングでは期待できない効果③:発音ルールに関する知識の習得
英語には、日本語にはない音があったり、文中の単語と単語がつながって、全く別の音に聞こえたりします。これらもシャドーイングをしながら音に慣れることは可能ですが、ある程度は英語の発音ルールに関する知識がある方が、理解や上達が確実に速くなります。
参考)発音用の教材
おすすめ教材
すべてにおいてあてはまることですが、自分のレベルに合った教材を選ぶ必要があります。
シャドーイングにおける「自分に合う」という定義は、「文字ベースでは読みやすいと感じる(難しすぎない)」というものです。
シャドーイングはリスニング力や発音力を高めるための訓練です。リーディングとは異なり、読解力やご語彙力を高めるためのものではありません。
難しい文章を選んでしまうと、理解や進度において感じるストレスが大きくなり、挫折の原因になります。
必ず「文字ベースで理解しやすい文章」に取り組んでください。
資格や検定を目指されている方
それぞれの試験に使用する問題集についているリスニングやスピーキングの問題に取り組んでいきます。
資格や検定は目指されていない方/英会話力を高めたい方
映像
字幕のついた素材を選びます。youtubeの英語ネイティブが運営しているチャンネル、NetflixやHulu、TEDなどが、実用的な英語であり字幕も付いており、自分のレベルに合うものを探すことができるという点でおすすめです。興味があったり、おもしろいと思ったりするものを選ぶことで、継続力が格段に上がります。
〇 シャドーイング:音声から1~2語遅れて発音しながらついていく訓練方法。
〇 効果:リスニング力とスピーキング力の向上、発音の矯正が見込める。
〇 期待できないこと:大幅な語彙力up、文法力up、発音ルールに関する知識の習得。